…ケータイがないのを
知っていて
はぐれるなんて

そこに
計画性を感じるのは
私だけでしょうかッ。

だけど。

「何よッ!
私なんか放っておいて
さっさと
ふたりで遊んでくればッ」

「ルリッ!」

…嫉妬深さは
オトナの女性と変わらない
小学5年生。

自分が倒れたのは
計算外のコトだったんだろう。

「だいたいルリが
ダイエットばっかしてるから

こんなトコロで
貧血なんか起こすんだろ!?」

「今、そんな話しなくても
いいじゃないッ」


ルリちゃんは
おにいちゃんに怒られて

フテくされるように
壁の方にカラダを向ける。


…ヤな空気ッ。


「…何か冷たいモノでも
買ってきますね」

その場から逃げ出すように
部屋から出ようとした私を

「トーコちゃん!」

先輩がドアの外まで
私を追い掛けてきて

「ありがと、ね」

ルリちゃんに
気づかれないように
私にそっと
耳打ちしてきた。

うわ。

耳元に先輩の息が掛って
…ドキドキするッ。


こんなに近くに
先輩の顔があるなんて。

ただの耳打ちなのに
どうしてこんなに
汗をかいてしまうのかッ。

「ルリ、ああ見えて
ぶ〜さんが好きでさ。
ぶ〜さんのかき氷とか
頼めるかな」

もちろんですッ!!!

アナタのお願いなら
たとえ火の中、水の中
炎天下の中ッ!

「トーコちゃん。
お金はここから
3人分出してね」

なんて
先輩が自分のサイフまでをも
私に預けてくるモノだから!

何だか私ッ
奥さんみたいじゃ
ないですかッ。

アナタは私をどこまでも
舞い上がらせますッ!!!!


「せ、せせ先輩もッ
かき氷でいいですかッ?」

いかんッ!
興奮のあまり
舌が回らないッ!!!

「僕はトーコちゃんと
違うのがいいかな」

「え」

「ふたりで2種類の味
分け合って食べようよ」

「!!!」

ああッ!
先輩ってばッ

なんて乙女心を
刺激するんですかッッ。

先輩ッ、私今日まで生きてて
本当に良かったですッ!


「いってきま〜す!」

宝物のように
胸にサイフを抱え
私は外に飛び出した。