「だ〜か〜ら〜!

ねずみ〜のバイトに
呼び出されて
ココにいるんだけど?」

そこまで会話して

私は初めて
セイの異変に気がついたッ。


「セイ、アンタっ
化粧してるでしょ!!!!」


「…化粧の前に
衣装に気づいて欲しかったな」

…あんまり違和感が
なかったから、って
言い訳も変なんだけどッ

「どどどどうして
ドレスなんかッ
着てるワケッ!?」


「パレードのダンサーが
急にひとり倒れてさ。

俺、代役なの」


「…どうしてオンナ役なのよ」

「別に、何役でもやるよ。
それこそ
ぶ〜さんのキグルミとかにも
入ったコトもあるし」

化粧した顔で
キレイな弟がにっこり笑う。

…違和感がないから
なんか余計ムカつくよねッ。

元がいいからなのか。

化粧が絶妙なせいなのか。

コワイくらいのオーラが
漂っていて。

ドレス姿なのも
あい手伝って

その姿は充分すぎるくらい
周囲のヒトの目を引いていた。


あっという間にヒトの輪が
何重にも出来ていって

ケータイカメラを
向けられるッ。


「場内アナウンスされてた
16歳の
迷子のトーコちゃんで〜す」

なんてッ!

私の腕を取って
笑い者にしてッ!!!!


「デレラ姫〜ッ!!!!」

掛けられる声に
気まぐれに
愛想を振り撒きながら

やりたい放題ッ。

セイってば
すっかりスター気どりだッ。


「このヒトは芸能人でも
何でもありませんからッ!!」

ただのその他大勢
一般ピープルですッ、と

目立つセイを
医務室の中に連れ込んで

私はその場から避難したッ。


「えらく早かったね」

ベッドの傍で
ルリちゃんに付き添っていた
クボ先輩が
こっちを覗き込んでくるッ。


「あれ?」

先輩のその視線は明らかに
私の後ろにいたセイに
注がれていて。

「姉がいつも
お世話になってます」

セイがちゃっかり
オカマ声で自己紹介ッ!!


「妹さんなの?
凄い美人さんだね」

クボ先輩ッ
お願いですから
こんなヤツの言うコトを
鵜呑みにしないでくださいッ!


「あのッ
“コレ”は違うんですッ」