…デート、だったんだよね。

その様子に
私のアタマもすっかり
冷静を取り戻す。

セイと私と
クボ先輩とルリちゃん
4人揃って医務室を出た。


「今日は残念だけど
またいらっしゃいね」

ルリちゃんに
華麗に手を振りながら

セイはひとり
バイトの準備に
戻って行ったけどッ。

…残念ドコロか
思いっきり嬉しそうな
そのセイの満面の笑顔が

ムカつく程、憎たらしいッ。

「…医務室は暗くて
気づかなかったけど

トーコちゃん
口紅の色、変えたんだ?」


「え」

クボ先輩の視線が
私の口元を凝視していて。

「!!!」

給湯室の出来事が
アタマの中に蘇り

思わず
顔が引きつってしまうッ。


「……」

これって、もしかして
セイの口紅なのではッッ。

心当たりのある
恐ろしいその事実に

背中から体温が
イッキに抜けていくッ。


「薄暗い給湯室で
化粧直ししてたのかな?
ちょっと、はみ出てるよ」

口元を隠そうとする私の手を
クボ先輩が制止した!


「…あ」

私の唇からはみ出ていた
余計なルージュを

クボ先輩の指が

拭き取って
拭き取って

拭き取ってッッ!!!


うっひゃあああああ。


ク、クボ先輩の指が

指が私のッ
私の唇にッッ!!!!!


それだけでも充分
息が止まりそうな衝撃
だったのにッ!

「なんかキスとか
したくなっちゃう色だね」

トドメのクボ先輩のひと言に
私はその場で
即死しそうになるッ!


こ、こここここ〜ゆ〜ときッ

私はどんなリアクションを
取ればいいんでしょうかッ。

「……」
「……」

「ニイニ!
私ッデレラ姫のグッズ
買って帰りたい!」

「…ああ」

思わぬトコロで
ルリちゃんの存在に
助けられるッ。


「そ、そそそそうだ!
先輩のおサイフ!」

私は先輩からサイフを
預かったままだったコトに
ようやく気づいて。

私からサイフを受け取ると
先輩はルリちゃんに
1万円札を手渡した。

「もしかしてトーコちゃん
中身、見ちゃった?」