『彼』の手によって
私は人形のように
立ったまま
どんどん
着衣を剥がされていった。
スカートも
例のごとく
簡単に落とされる。
私の足元に跪くようにして
『彼』の手が
私のソックスに掛った。
「…あッ、や」
『彼』の影が
私の視界の端で
陽炎のように揺らめいていて
これは現実なの?
それとも…。
片足を持ち上げられ
おおきく重心を崩す私に
「壁に手をつけば?」
『彼』はクールに命令して
私のつま先に
くちづけをする。
私は
ただただ
魔法にかかったように
『彼』のコトバに従っていて
この非日常的な空間に
完全に
自分をなくしていた。
『彼』は
私の足の指を
ひとつひとつ確かめるように
丹念に愛撫して
ヒザから腰に向かって
何度も何度も
指や掌が
羽根のように
軽やかに踊ってる。
ヒトの肌を
触っているというより
陶器か何かを
愛玩するような
自分が何か
美術品にでもなったような
錯覚に落ちそうになった。
芸術家の奇行に
狂わされる。
アタマが
おかしくなりそうだ。