冷たい手。
擦るように
滑るように
私のカラダを
弄んでいた。
「…たまゆらの」
古典の授業で習ったコトバが
蘇ってくる。
玉が触れあうように
かすかな
じれったい『彼』の指の動きに
ふと口をついたそのコトバ。
「万葉集だな」
『彼』が珍しく
まともな返事をした。
勉強ができる印象なんて
なかったけれど
ちゃんとマジメに
授業を聞いていたんだ。
変な感心をしてしまった。
「…どうしたの?」
『彼』の手は
そのまま止まって
しまっていて。
快感に集中していない私に
怒っているのか。
躊躇っているのか。
『彼』のその長い前髪を
私はかきあげて
『彼』の表情と意図を探る。
漆黒の瞳が暗闇の中
光ったと思ったのも
一瞬で
唇を奪われる形で
私は『彼』の表情を
見るコトを阻まれた。
情熱的なキス。
『彼』の前髪が
私の瞳に触れて
私は『彼』の髪を
何度も何度も
かきあげる。
私の腕に
『彼』は唇を移動させ
激しく愛してきた。