ゴミ箱の中に
無造作に捨てられていた紙。


手を拭いて
拾い上げてみると

学校の小テストで。

「まともに書いてる
答えがひとつもない…」


なのに
全部に赤丸がついていて

一見、満点のテストに見えた。


リビングにいた『彼』に
問い糺しても

「…だから?」


顔色ひとつ変えずにいる。


「こういうのって
偽装、でしょ。
よくないよ」


勉強ができなくたって
別に恥ずかしいコトじゃない。

なのに
こんな見え透いた
小学生みたいなズルをして

人間性を疑うよ。


こういうコトをするヒトに
抱かれてしまったかと思ったら

情けなくって涙が出た。


私ってば
ホント、ヒトを見る目が
ないっていうか…。

涙が止まらない。


「…先生が
勝手にやってんだから
俺に言われても知らない」

「え?」


「回答欄に何か
書くだけでいいから、って
アタマ下げられたから

テスト受けて
やってるだけだし」


何、それ!!!!!!!


「特待生だから
進級して貰わなくちゃ
困るんだってさ」


「……」

確かに
ウチの学校は

特待生が優遇されるって
ウワサがあったけど

本当だったんだ…。


『彼』は
絵画の世界で有名だとは
きいていたけれど

そんな特権を貰える程
すごい人材だったなんて

私はあまりにも
認識不足だった。


「でも、おまえが嫌なら
テスト受けるの止める」

「違うでしょ!!
ちゃんとテストを受ける
でしょ!」

「……」

『彼』は不満そうに
私に背中をむけた。

なのに

「…テスト
ちゃんと受けるよ」


なんて。