『彼』のセリフに

私のカラダは
固まるしかなくて。


「ヒメ〜!」

音楽室ドアが開く音がした。


「あれ? いないね」


『彼』は黙って

空いている指で
私のカラダを

触れるか触れないか

微妙なカンジで弄んでいる。


「ノートあったのかな?」

音楽室のドアの辺りで
話し込んでる私の親友達。


彼女達の話が
長引けば長引く程

『彼』の指のイタズラが
エスカレートしていく。


私のカラダに『彼』の指が
なじんでいくのがわかった。

鳥肌が立って

寒気がしているハズなのに


アタマとカラダが
別物になっている。


この異常な状況が
私を狂わせているのか。


「ヒメに電話してみよっか」

ジュンジュンの声が
聞こえていたクセに

『彼』はそれでも
指を止めようとしない。


大胆な『彼』。

もし、ここで
こうしているコトが知れたら

私だけでなく『彼』だって
立場はないハズ。


何を考えているのか。

何も考えてないのか。

「あれ、出ないよ」

「教室のカバンの中に
ケータイ入れっぱなしに
しちゃってるんじゃないの?」


ふたりの声が足音とともに
遠のいていく。

ふたりきり。


なのに私は動けずにいた。


『彼』は手を止めて

「どうして
固まっちゃってんの?」

私の口を塞いでいた手を外す。


「これ以上進んでも
O.Kだって
受け取っていいワケ?」


『彼』のコトバにハッとして

慌てて身を起こした。