学校の帰り
『彼』の指定した時間通りに
私はそのホテルに向かう。
日本でも3本の指に入る
外資系の超高級ホテル。
利用している客は皆
高級外車やハイヤーで
出入りしていて
制服姿の私は
はっきり言って浮いていたし
ヒトの目を引きまくっていた。
約束のティーラウンジに
こそこそと
駆け込んでいこうとして
「ヒメミヤさまですね」
ホテルマンに名前を呼ばれて
呼び止められる。
ホテルマンは
『彼』の名前を口にして
「制服姿の美人の女子高生が
いらっしゃると
窺っておりましたので」
って。
それが本当なら
私に声をかけるのは
間違っているし
そんなコトを『彼』が
本当に口にしていたとしたら
それは物凄いイヤミだ。
何か不安が
ムカつきに変わっていく。
それでも
案内された席は
他の席からは様子が
わかりにくい造りに
なっていて
ちょっとホッとした。
メニューが
一応あるのだけれど
「お好みのモノが
ないようでしたら
どんなモノでも
ご用意できますので」
なんて。
お客さまの希望は
何でも叶えますって姿勢が
「…いくらかかるんだろう」
財布の中身を
心配させた。
しかも
メニューに値段が
書いてない!!!
…まさか時価では
ないんだろうけれど。
「…あの。
一番安い飲み物をください」
すんごく恥ずかしい
メニューの頼み方だと
自分でも思った。
なのに
「このラウンジの使用料は
すでに宿泊料に
含まれておりますので」
飲み放題
食べ放題
頼み放題だと
ホテルマンは言う。
…ここの宿泊費っていくら
かかるんだろうか。