「ミスター・スミス!」
ジュンニイは親しげに
その外国人と抱き合っている。
以前、仕事をした画商だそうで。
博物館に併設されている
美術館で
来年開く個展の
打ち合わせに来たらしい。
「とっても世話になったんだよ」
ジュンニイは
この再会に目を細めた。
「……」
だけど
その外国人は
私のカラダを上から下まで
舐めるように見ていて
…なんか気持ち悪い。
「ヒメとどこかで
会ったコトないか、って
言ってるけど」
調子のいい外国人。
「知らない、と思う」
私は
ジュンニイの陰に隠れた。
私の気持ちを察してか
「行こっか」
ジュンニイが
私の手を強く握ってくる。
「いいの?」
せっかくの再会なのに。
「いいの」
ジュンニイは
ミスターに別れを告げ
「ヒメママが
手料理作って待ってて
くれてるんだろ?」
私の背中を押して
歩き出した。
「ハンバーグ作る、って
言ってた」
「ヒメママのハンバーグ
美味いんだよなあ」
予想外の
ジュンニイのひと言に
思わず足が止まる。
「覚えてない?
俺、ヒメの家に
昔よく食べに
行ってたんだけどなあ」
…覚えてない。
ジュンジュンが聞いたら
「また?」って
呆れ果てられそうだ。