「だから徹夜で
本読むのはやめなさいって
言ったのに」


彼氏を介抱しながら

ユッキの口から
厳しいセリフがポンポン
飛び出している。


「自販機で水
買ってきてやってくれる?」

やっぱりユッキは
しっかり女房で。


「アニキ、小銭ある?」

ジュンジュンも
こういうときの対処が早い。


なのに。

「領収書、貰ってこいよ〜」

なんて

ジュンニイってば
相変わらずの脳天気…。


私から冷たい眼差しを
むけられて
何だか嬉しそうで。

…相変わらず
変なおにいさんだ。


「吐いちゃいなさい!」
「楽になるから!」

そんなこと言われても
簡単に吐けるもんじゃない。


私も車酔いを克服するの
凄く大変だったから

その辛さはよくわかる。


…そう言えば

ミントの香りが
酔い止めになるって
教えてくれたのって

誰だったっけ。


「ほれ! アゴ突き出して」

ユッキの彼氏の口の中に
ジュンニイが
指を突っ込んで

気管に入ったら危険だと

吐き出させた後
うがいをさせる。


「脱水症状を起こさないように
こまめに水を飲むように」

なんて
アドバイスなんかして


…手慣れてる。


「ヒメも昔、このパターンで
死にかけたコトあったよね」

ジュンジュンの
何気ないひと言が
私の記憶を蘇らせた。


あああああ!

思い出した!!!


その昔、ジュンニイは
あろうことか

車酔いした小学生だった私を
逆さまにして…!!!


「あのときは吐いたモノが
気管に入って苦しかった!」

「アニキってば
あの後すんごい落ち込んで」


救命処置について
一生懸命勉強してたと

ジュンジュンが
ジュンニイをフォローする。


「ミントティーとか

よくアニキに
飲まされてたよね」


「そう言えばそんな記憶も…」


私の車酔いを
治してくれたのは

ジュンニイだったかも。


「ヒメって
いっつもそうなんだよね。

昔のコト
何にも覚えてなくって」


「え?」