「大事なコトも
何にも…」


「大事なコト?」


「……」


私の問い掛けに
答えようともせず

ジュンジュンは

ひとりさっさと
車に乗り込んで
しまっていて。


…それは何だか
棘がある言い方で。


「…確かに
私はモノ覚えの
いい方ではないけれど」


「ヒメは特別!
記憶力悪すぎなんだから」


ユッキが横目で苦笑する。

「あッ!、私ッ
けっして
ジュンジュンに対して…!」


「わかってるよ!」

私の往生際の悪さに

ユッキがまた笑ってる。


「ほら、おいてくぞ!」

ジュンニイが
運転席から手招きをして

私達は
車に乗り込んだ。


さっきまで
助手席に乗っていた
ジュンジュンが

今度は
後ろの席に座っている。


…ジュンジュンが
機嫌を悪くする様なコト
何か言っちゃったかなあ。


私は空いていた
助手席に座って

ミラーごしに
ジュンジュンの様子を
窺った。


「助手席のが
酔いにくいでしょ」


その声に振り返ると

ジュンジュンが
笑っていて。


よかったあ。

いつもと同じ
ジュンジュンだ。


…気のせいだったのかな。


私の悪い癖。


つい人の顔色ばかりを
気にしてしまう。