「ビール1杯くらいで
こんなんじゃ
営業の仕事なんか
大変だろう?」
パパが
話題を変えようとした。
のに。
「この子があんな廃墟に
入り込んでいたなんて
他の誰もが
思いつかなかったのに
ジュンイチくんは
本当に
この子のコトを昔から
よく理解して
くれているのよね」
ママがしつこく
同じ話題を
掘り返してくる。
「あのときお嬢さんを
最初に見つけたのは
妹なんですよ」
ジュンニイの
思わぬ発言に
箸が止まってしまった。
「知らなかったの?」
…知らなかった。
私は発見された後
1週間近く
高熱を出して
寝込んでしまっていて
そのときの記憶が
全くない。
「アイツは
自分の手柄を
吹聴してまわったり
しないからね」
…ホントにそうだ。
恩を売っても
おかしくないのに。
ジュンジュンらしい。