「…何?」

「あのッ…!
今更なんだけど」


私は
行方不明騒動の話を
切り出した。


ジュンジュンの
足が止まる。


「…思い出したんだ?」

「え?」


「あの日のコト」


「ううん。

ジュンニイが
そう言ってたから」


「…そう。そっか」


「ありがとね」

「…うん」


どこか歯切れの悪い
会話だった。


「あ、ジュンジュン。
髪に何かついてるよ」

「え?」

「ほら、これ」


私はジュンジュンの
髪にこびりついていた
白い塊を取って

見せた。


「セメント? 石膏?
何だろうね」

「…壁にもたれたときにでも
ついたんだワ」

ジュンジュンの声が
裏返ってる。


…めずらしいな。


「じゃあね」

ジュンジュンは
振りむきもせず

帰っていった。