「何だよ。
何笑ってるんだよ」

ジュンニイが
私のアタマを小突いた。


「バイトのコトとか
ちゃんとジュンジュンに
聞いておくから!」

私は取り繕って
部屋を出る。


「コーヒー飲む?」

リビングでジュンニイが
手慣れた様子で
コーヒーを淹れ始めた。

豆も自分で炒って
ブレンドして

相当な本格派だ。


コーヒーのいい香りが
懐かしいリビングに
広がってゆく。


「この部屋は
変わってないんだね」


「そりゃ
オヤジの家だもん。

俺達がオヤジのセンスに
口出しなんか
できないよ」


「私、この部屋
居心地いいから好き」


ジュンニイが私のセリフに
やさしく微笑む。


やっと笑ってくれた!

ジュンニイの笑顔に
安堵する自分がいた。


淹れたての
コーヒーを運んできて

ジュンニイはそのまま
私の隣りに座る。


「もしかして猫舌?」

そう笑って
ジュンニイは私から
カップを取り上げる。


カップを不自然に
テーブルのむこう側に置いて

ジュンニイが
もたれかかってきた。


私はその重みを支えきれず
ソファーに倒れこんで


「ちょっ…」

ジュンニイが
私のヒザの上に突っ伏する。


「おっも〜い!」

ジュンニイを
持ち上げようとして


「ジュンニイ、すごい熱!」

「あ。何か今日は
ダルイな〜って
思ってたんだけど」


「……」

こんなに熱があっても
自覚してなかったなんて

元来、丈夫なんだよね。


フツウ気づくよ。