「で、この絵の
信憑性なんだけど」
「母親の自称夫の
持ち込み、ですか」
『彼』の母親。
その夫…。
『彼』にだって
家族がいて当然なのだけど
それは
その浮世離れしていた
『彼』には
そぐわない響きで。
「夫だと言ってはいたけれど
どう見ても
ヒモみたいだったけどね」
「怪しすぎますよね。
ホンモノだとしても
正当な方法で手に入れたんじゃ
ないかもしれないなあ」
ヒモっていうのは
自分は働かないで
オンナのヒトに
生活の面倒をみて貰っている
オトコのコトだ。
…『彼』のお父さんじゃ
ないのかな。
複雑そうな事情が
垣間見える。
『彼』のどこか
投げやりなトコロは
この辺りに
起因しているのだろうか。
「そのヒモが証拠だと
置いてったのがコレ」
支配人が見せたのは
親子遠足か何かの
古い団体写真だった。
私は反射的に
古い写真の中に
『彼』の姿を探してしまう。
「…これ。英会話教室の
キャンプのときの写真だ」
ジュンニイが写真を指差して
「ほら、最前列に」
小学生のジュンジュンが
写っていた。
「そのオンナノコの
隣りで写ってるのが
本人らしいんだけど」
支配人が補足する。
…面影が残ってる。
確かにジュンジュンの隣りで
ジュンジュンと手を繋いで
写ってるのは
『彼』だった。
ふたりは
そんなちいさい頃からの
知り合いだったの?
そんなコトひと言も…。
「この少年も俺、知ってる」
え?