「ほっぺ、こんなに
冷たくなって」

ジュンニイの手があったかい。


「ジュンニイこそ
熱はちゃんと下がってる?」

「ヒメが冷たいんだよ」

私のほっぺをジュンニイが
軽く引っ張った。


「新居、もう入居
できるんだってさ」

ジュンニイが
当然のように合鍵をくれる。


相撲取りのキーホルダー。


「ふたりの想い出?」

このセンスに爆笑だ。


ジュンニイは
ウケる私のヒザの上の
お弁当箱を覗き込む。


「いいね〜。新居でおせち」

「自信作でっす!」

「すっごい!
全部、自分で作ったの?」

「…ママと半々、かな?」


「俺とふたりで食べて

明日の朝
帰ってこいって?

ヒメママ…大胆だな」


「差し入れしておいでって
意味だと思う!」

力を込めて反論する。


「テーブルと布団がいるな」

「私の話聞いてない
でしょ〜!!!」

「聞こえなあ〜い」


子どものような笑顔で

ジュンニイは
例のインテリアショップに
むかって
ハンドルを切った。

大晦日の
インテリアショップは
とってもにぎわっていた。

駐車場の順番待ちも
ジュンニイといっしょだと
退屈しない。


ジュンニイの買い物は
とっても早くて。


イメージがキチンと
アタマの中に
あるんだろうな。

迷わない。


「大きい家具は俺が選ぶから」

私は雑貨類をまかされた。


「壁もカーペットも白だし」

何を組み合わせても
大丈夫と言われても

選択肢が広くなればなるだけ
かえって迷ってしまう。


とりあえず
ジュンニイの後ろにくっついて

ジュンニイのリアクションを
窺いながら選んでいく。


「カップル向けなら
こちらが楽しめますよ」