『彼』の父親の家族が
小学生だった『彼』を
アメリカに連れ帰って
しまって以来
音信不通だったコト。
今いっしょに
暮らしているオトコが
テレビの報道で
『彼』の存在を知って
学校名を手がかりにして
『彼』の居所を
つきとめたコト。
自分の為に
息子の居場所を
探しているのだと
喜んで協力したら
息子を脅して
絵を描かせて
金儲けしようとしたコト。
「私がしっかり
働かなかったから。
あのヒトは悪くないんです」
それでも
母親はオトコをかばう。
「……」
自分の息子に対して
傷つけたとは
思わないのだろうか。
『彼』にとって
本意ではない絵だと
絵の市場価値には
配慮しておいて。
あのヒモは叫んでたよね。
「息子の前で
母親とヤッてやったら
その横でアイツは
この絵を描きあげたん
だからな!」
表面上には出さなくたって
それってどんなに
ショックなコトか想像はつく。
だって
その日の『彼』は
フツウじゃなかった。
カラダ中に
絵の具をちらかしたまま
シャワーも浴びずに
やってきて。
そんなときに
私が売女みたいな
真似事をして
『彼』が全ての女性に
幻滅してもおかしくはない。
別れ話を切り出されて
当然だった。