『彼』は芸術家でも
クレージーでもない。

ただの傷つきやすい
少年なのだ。


追い詰められていた『彼』。


『彼』の変化に
どこまでも気がつかずに

何て私は
愚かだったんだろう。


悔やんでも
悔やみきれない。


オトコにすがらなければ
生きていけない

そんな『彼』の母親を
叱責する権利など

私にはなかった。


沈黙が続いて

ふたりで
ただお茶を飲む。


「あの…。

あの子は学校では
どんな様子ですか?」


沈黙に
耐えられなかったのか

お母さんが質問してきた。


「フツウ、です」

意地悪な言い方だと
自分でも思った。


気まずい。


ますます
気まずくなった。


でも

何かもう
このヒトとは話したくない。

母親の顔色を
見ずに済むよう

私はひたすら
お茶をがぶ飲みする。


それから30分ぐらい
経っただろうか

やっと実家から
ジュンニイが戻ってきた。


「おっそ〜い!」

本当に待ちかねた。