おおきな布団袋を
私のアタマの上に乗せて


「おかえりなさい、だろ!」

ジュンニイが笑った。


「何でエアコン
つけてないの?」


…そんなトコまで
気が回らなかった。

「写真プリントしてきたよ」

ジュンニイは私に話しかける。


あくまで『彼』の母親とは
話したくないようで。


「ありがとうございます」

写真を手にして

『彼』の母親は
ぽろぽろ泣き出した。


こういうの、苦手だ。


それでも

「…『彼』
面影残ってますね」


場がシラケないよう
ココロにもないフォローを
入れてしまう自分が哀しい。


「ええ、ええ」

私が差し出したティッシュで
お母さんは鼻をかむ。

「テレビで見たときだって
すぐにわかりましたよ」


『彼』を引き取った
創業者一族のコンツェルンで
お家騒動があり

会社ごとバラバラに解体され

『彼』の消息も
わからなくなってしまって


「日本ならともかく
アメリカなんて
探しようもなくて…」


施設に保護されていたときに
その絵の才能を見出され
ホテル王が後見人になったと

テレビの番組を見て知って

泣いたと言う。


母親は写真の中の『彼』を
愛おしげに
指でなぞってみせた。


「…どうしてこの写真を
もってらしたんですか?」


「あ、この子の
お兄さんなんです」

写真の中のジュンジュンを
私は指差した。


「まあ、ジュナちゃんの」

母親はジュンジュンが
ちいさい頃
よく家に遊びに来ていたと
証言する。


思わず
ジュンニイの方を見た。

ジュンニイは
首を横に振っている。

「……」

ジュンニイも知らない
ジュンジュンの過去…。