警察からの連絡がきて
「行かなくちゃ。
遅くなったら
また機嫌が悪くなる」
「警察まで
送っていきますよ」
『彼』の母親のコトを
面倒くさそうにしているのに
元来のヒトの良さが
やっぱり顔を出してしまう
ジュンニイで。
「ヒメ、おまえは留守番!」
「でも」
ちょっと心配。
ジュンニイは
このヒトとふたりで
大丈夫なのかなあ。
ジュンニイのジャケットを
掴んだ手を離せずにいた。
「お嬢さん」
『彼』の母親が玄関から
私に声をかけてくる。
「もしあの子に
会うコトがあったら
あの子に
ごめんなさいと
伝えてください」
お世話になりましたと
アタマを深々と下げて
お母さんは背中をむける。
え…。
それだけ?
「それだけですか?」
「…え」
私の切り返しが
意外だったのか
母親はたじろいで。
「自分で会って
ちゃんと『彼』とむき合って
気持ちを
伝えてあげてください!」
黙っていたらわからない。
近しいヒトなら
なおさらだ。
言い訳をしない謝罪なんて
いったい
何を許せというのか。
「…あの子には
何を言っても無駄ですから」
初めて見たこのヒトの
意志的な瞳。
「あの子の父親の家族が
引き取りにきたときだって
私が金で
自分を売ったんだって
勝手に思い込んで」
何も聞き入れようとは
しなかったと
母親は吐き捨てた。