「何を焦って
異例のメンバー入りを
させたのか
当時、憶測を呼んでいた
らしいね」
『彼』はもう
絵を描くコトができない。
「こういうコトだったんだよ」
視力障害になって
絵が描けなくなったというのに
それを隠したまま
栄誉を受けて
メディアに持ち上げられて。
『彼』はどんな気持ちで
カメラの前に
立っていたのだろう。
そして
そんな『彼』をノンキに
微笑ましいと
笑ってしまった私は
ムカつかれて当然だった。
あんなに近くにいたのに。
何にも知らなかった。
何にも気づかなかった。
私を見なかったんじゃなくて
『彼』は私を見るコトが
出来なかったんだ。
私を人形のようにして
愛で続けていたのは
その手を目にして
私を感じていたのだ。
長い間、言い出せずに
片思いしていた相手を前に
どんどん
見えなくなる焦燥感。
どんなに
追い詰められていたのだろう。
展示されてる絵に
『彼』の叫びが
見てとれるようで
胸が張り裂けそうになる。
「ヒメ!」
その場に崩れ落ちようとする
私を
ジュンニイが支えた。