「同級生って言ってたもんね。
そりゃショックだと思うよ」
支配人が物知り顔で
話しかけてくる。
ムカつくけど
このオトコの無神経さに
今は感謝だ。
「支配人!」
店員が息を切らして
飛んできた。
「下の階でお客さまが
支配人を出せと騒いで…!」
そう報告し終わらないうちに
エスカレーターをオトコが
駆け登ってくる。
「支配人いるじゃねえか!」
オトコは支配人の
胸ぐらを掴むと
「新聞見たぞ!
馬鹿にしやがって!」
『彼』の絵を売りにきた
例の¥\"ヒモ¥\"だと
私にもわかった。
自分が握らされた金額と
報道されている
オークションの
予想金額のゼロの数が
2つ程違うと訴えている。
「あくまで予想で。
現時点での市場価値は…」
「ナメてんじゃねえぞ!!」
ドガ!!
オトコは支配人の
すぐ横にあった商品を
蹴り倒した。
「アンタッ!
やめてッ!!」
オトコにすがりつくように
叫ぶオンナ。
『彼』のお母さんだ。
直感的にそう思った。
まっキンキンの
ぼさぼさの髪。
テロンテロンの
安っぽい派手な柄の
トップスから
胸がおおきく覗いてる。
蝶のタトゥー。
皮ジャンもひと目で
フェイクだとわかる。
『彼』の高級ホテルとは
あまりにもギャップが
ありすぎだった。
「バカにしてんじゃねえぞ!」
大声で
威嚇しているオトコは
腕やら首に
ぶっとい金の鎖を
ジャラつかせていて。
スーツに毛皮。
高そうだけど
いかにも
そっちの世界のヒトって
カンジで。
自分に絡みついてくる
オンナのその頬を
「テメエは黙ってろ!」
殴り飛ばして
「きゃあああああ!!!」
場内が騒然とする。