「テメエが
そんなんだから

ナメられるんだよッ!!」


倒れこんでいる母親に
容赦なく
何度も蹴りを入れる。


「何が現時点での
市場価格だ!

そいつは
正真正銘本物だ!」


母親の髪を掴んで


「息子の前で
母親とヤッてやったら

その横でアイツは
この絵を
描きあげたんだからな!」


…コトバもでない。

このオトコは
何を言ってるのか。


「アイツは天才だよ。
サイコーにクレージーで
話がわかる息子さあ!」


そう言って
母親を引きずり回した。

ジュンニイが
私の背中を押して

その場から
立ち去ろうと促す。


でも…。


こんなの。


「もうやめて!!」


思わず叫んでしまっていた。


場内が静まり返って

オトコが私の方に歩いてくる。


ヤバイ!


後悔しても遅かった。


私に掴みかかろうとした
そのオトコの手を
ジュンニイが阻む。


「ナメてんじゃねえぞお!」

ジュンニイがぶっ飛ばされた。


「きゃあああああ!!!!」


場内に再び
女性客の悲鳴が響く。


駆けつけてきた警備員に
羽交い絞めにされ
オトコは連行されていった。


「ジュンニイ!」

口の端が切れて
血が出ている。


「…巻き込まれて
おまえに何かあったら
どうするんだよッ!!!」

ジュンニイに
初めて怒鳴られた。