支配人がジュンニイに
スタッフルームでの
治療を勧める。
店の人間が
止めに入らなかったコトに
私は不信感バリバリだった。
「あのヒトも処置して
あげてください」
私に指摘されて
初めて倒れてる母親を
介抱しようとする有様で。
「…お願いです。
その絵を返してください」
その母親は
支配人の足元にすがりついて
土下座を始める。
「その絵はウチのヒトが
無理やり息子に
描かせたもので
本来のあの子の絵じゃ
ないんです」
母親は何度も何度も
床に自分の額を
押しつけていた。
「まさかこの絵が
こんなに脚光を
浴びるなんて…!」
こんな作品を
表に出されては
『彼』の画暦に傷がつく。
母親は
そう心配をしていた。
支配人は
「この作品は
『彼』の傑作で
世に出すべきだから」
そう言って
相手にしようとも
しなくって。
「だったら、せめて
写真を返してください。
息子といっしょに
写っている
唯一の写真なんです!」
「あれはこの絵の
証明になりますから」
「…そんな」
母親は泣き崩れて。
「…ねえ。あの写真
ジュンニイの家にも
あるんだよね?」
「ヒメ…!」
その先を言うなと
いわんばかりの
ジュンニイで。
ジュンニイの気持ちを
わかっていて
「写真、パソコンで
プリントアウトしてあげて」
私は口に出した。