お父さんは
なかなか電話に出ない。

ジュンニイは留守番電話に
メッセージを吹き込んだ。


「俺、妹を引き取りに
行ってくるワ」

「酷いケガなの?」

「アタマを打ったみたい」


CTを撮りに
バイト先の近くにある
救急病院に行ってるという。


「ヒメもいっしょに
行くだろ?」

「えッ…」


思わず動揺してしまった。


「もしかして、ヒメ

妹とあれから
連絡とってないとか?」


…図星だった。


「ったく。アイツ
調子いいからな」

ジュンニイはジュンジュンに
裏切られる度

必ず舌打ちをしてみせる。


「ヒメもアイツの話
出さないから

てっきり解決したとばかり
思ってた」

「……」

「俺。ウソつかれたり
裏でコソコソされたりするの

すっごい嫌いなの」


ドキッとした。


ジュンニイは
穏やかそうに見えて
潔白なヒトだ。


胸が不安で
いっぱいになる。


「ホントのトコ、どうなの?」

「…ううん。
ジュンジュンの言う通り
ちゃんと解決してるよ」


ウソをついた。

そう話を合わせないと

いろんなコトを
突っ込まれそうで怖かった。


「いっしょに連れてって」

ココロにもないコトを口走る。


だって

ジュンニイに嫌われたら
生きていけないよ。


「ここから
アイツのバイト先
ケッコー近いから

10分かからないかもな」


ジュンニイが
口にした目的地。


それは

『彼』と利用していた
あの超高級ホテルだった。