「バイトって…?」

「前に問い詰めたときには
ホテルでバイトだとしか…」


だから夜勤とかあるんだと
説明していたという。

「ベルガールとか
客室業務とかじゃないのかな」


ホテルでのバイト…。


「ほら
シートベルトちゃんとして」

「あ、うん」


嫌な予感がした。


あのホテルの従業員は
みんな私と『彼』のコトを
全て知っている。


ううん。それよりも

『彼』が常宿にしている
ホテルで働いてるのは

ただの偶然なの?


万が一知らずにバイトを
始めていたとしても

それを知る確率は
あまりにも高すぎだ。


「着いたよ」

口実を考える暇もないまま
ホテルのベルマンに
車のドアを
開けられてしまう。


ヤバイ…!

顔なじみのベルマンだ。

私の顔を見て
むこうも
気がついたようだった。


でも

運転席にいるのが
男性だと確認するや
思わせぶりに微笑んで


「ようこそ」

知らんふりを
きめてくれた。


ほおおおおお。

危機一髪。


こんなコトでは
先が思いやられる。


みんな私を覚えていて。

こういう超のつく
一流のホテルでは

利用客の情報を
従業員同士で
共有してるっていうから

もうどこにも
逃げられないよ。