ジュンニイが
ベルマンに事情を話すと

「伺っています。こちらへ」


何故か
特別階専用のエレベーターに
乗せられた。


「従業員用の
間違いじゃないんですか?」


ベルマンが
ジュンニイの質問に
答える間もなく

エレベーターのドアが開く。


「あら、ジュンじゃないの!」

素っ頓狂な声をあげたのは

ウチのママと同世代ぐらいの
派手なスーツ姿の
大柄な女性だった。


「あ、ミスター・スミスの…」

秘書さんだと
ジュンニイに紹介される。

「まあ、あの子
ジュンの妹だったの」

「妹はミスターの仕事を
ここで手伝ってたんですか?」


ジュンニイが驚いた。


「ホテルから連絡を
貰ったモノですから…」


私は胸を撫でおろす。


ホテルマンじゃないんなら
妙なコトは
耳には入っていないかも。

かすかに希望が
見えてきた。


「こちらのお嬢さんは?

残念だけど
関係者以外は…」

そこまで言いかけて

「あら、アナタ」

その女性は
私を舐めるように見回した。

…カンジ悪い。


まさか

以前、このホテルで
私を何回も
見かけたコトがある、とか…。


「ま、いいでしょう。
アナタも入んなさい」


「……」

ここで待ってるって
言ってやりたかったけど

ここには
『彼』と私の日常を
知っているヒトが多すぎだ。


それにこのヒトが
何かイラナイコトを
ジュンニイに
吹き込まないとは限らない。


しかたなく
秘書さんについて
奥の部屋に移動する。

ドアのむこうには
ミスター・スミス。

ジュンニイの登場に
驚きを隠せない。


秘書さんが
何やら私を見ながら
ミスターに耳打ちして

ミスターが
私に近づいてきた。