立像の後姿だ。

彫刻を始めたらしいって
インテリアショップの
支配人が言ってたけど


「彫刻じゃなく
粘土なんだ…」

私の独り言に
みんなが笑った。


「美術的な鑑賞を
目的として制作された
立体作品を

彫刻って言うのよ」


「日本じゃ
彫刻刀で彫るモノを
彫刻だと思ってるヒト
多いからな」

ジュンニイだって
日本人じゃないか〜。

「自分達だけ
国際人みたいに…」

「お、拗ねた、拗ねた」


ジュンニイが私のアタマを
笑顔でよしよし、する。


モニターに映し出された
白い立像。


前にジュンジュンが
髪の毛にセメントみたいなのを
つけてたコトがあったけど

この彫刻の材料だったのかな。

あのとき

ジュンジュンは
「壁にもたれかかってて」とか

そんな言い訳を
していたような
覚えがあるけれど

どうして
ウソをつく必要なんて
あったんだろう。


不安が
私の胸を圧迫する。



「いい出来なのよね。

コレが」


秘書さんが
メカをいじって

画面が
作品のアップになった。


「裸像ですか。

原寸大で
何かリアルですね」


「『彼』の今までの
作品からは
想像がつかないでしょう」


「もともと基本がしっかり
できてたんですね」


「正面からも観る?」

秘書さんが私を見て
思わせぶりに笑ってみせる。


これって。

まさか。

カラダが凍りつくのが
自分でわかった。