ジュンジュンは
この裸像の存在を
当然、知っていたんだよね。
知っていたのに
黙ってたんだよね。
なのに
どうして
私を問い詰めもせず
『彼』が私を
創り続けているのを
傍らで手伝い続けて
いたなんて。
「迎えにくるコトなんか
なかったのに」
ジュンジュンは
何もなかったように
ジュンニイに
話しかけてる。
「怪我したってゆ〜から
心配しただろうが!」
「アニキ、車?」
「そーだよ」
足音がこっちに
近づいてきた。
見覚えのあるスニーカーが
私の視界に入ってくる。
「ほら、立って」
ジュンジュンが
私の両肩を抱きかかえた。
「このコ
車酔いしやすいから。
我慢させてたんでしょ」
「あ、急いでたから」
「ばかアニキ」
「あ、ミスターに
訳さなくてもいいですから!」
ジュンニイが笑ゴマする。
「今日は早退させてください」
「『彼』が心配してるから
声かけて帰ってあげて」
秘書さんが
『彼』を気遣っていた。
「『彼』が心配してたのは
私じゃなくって
自分の目の代わりでしょう?」
ジュンジュンの辛口な返答に
みんな、黙った。
「な〜んて。
今日はちょっと疲れたので
このまま失礼させちゃって
くださ〜い♪」
ジュンジュンが
おどけてみせる。
「『彼』も私がいたら
作品を創り続けようと
するでしょ?
ちょっと休ませて
あげましょうよ」
「…そうね。
ドクターを呼んで
強制的に眠らせるわ」
「ヒメ、歩けるよね?」
「…うん」
ジュンジュンに支えられて
3人で部屋を出た。