車を正面玄関まで
回して貰うのを
待っている間
ジュンジュンが
お父さんに電話を入れる。
「安心したって」
「心配くらいさせてやれよ」
「だって
アニキの仕事の方が
すぐ駆けつけられるじゃない」
「ヒトの仕事を
自由業みたく言うな」
いつもの兄妹の会話。
いつものジュンジュンだった。
車が回ってきて
ベルマンが
ドアを開けてくれる。
私はジュンジュンに
腕を掴まれて
ジュンジュンといっしょに
後ろの席に座らされた。
「様子おかしかったら
すぐアニキに教えるから」
「ヒメ、悪かったな。
できるだけ平坦な道路の
コース選んで帰るから」
ジュンニイに
謝られて心が痛む。
ジュンジュンとふたり。
気まずかったけど
ジュンジュンは
何もなかったように
不自然なくらい
いつものジュンジュンだった。
「正月早々
ふたりいっしょなんだ」
運転席のジュンニイに
明るく話しかけている。
「よくヒメの親が
出してくれたよね」
「やっぱ、俺の人徳か」
「誕生日だもんね。
彼女といっしょに迎えたいって
泣いて
土下座でもしたんでしょ〜」
「忘れてない?」
ジュンニイが掌を
ジュンジュンに見せる。
「誕生日プレセントは?」
「お年玉は?」
兄妹ふたりで
盛り上がってて。
私はジュンジュンのペースに
為す術もなく
静かに
やり過ごすしかなかった。
膠着状態に
痺れを切らすように
メールの受信音が響いた。