だけど
「『彼』の手によって
産み出されていく作品が
どんどんリアルなヒメに
なっていく過程を
目の当たりにして
その事実を
認めざるを得なかったのが
何より辛かった」
「……」
行方不明事件のとき
高熱で意識を失っていた私を
ジュンニイが
助け出してくれていた
その横で
「『彼』の手を
いつものように握ろうとしたら
拒絶されて」
そのときの
ショックと言ったら
「キスシーンどころの比では
なかったよ」
何かある度に
リアルに蘇ってきて
「…ヒメを逆恨みした
ときもあった」
そんな親友の
懺悔にも似た告白に
私は何と声をかければ
よかったのか。
「作品からは
痛いくらいに
『彼』のヒメへの想いが
伝わってきて」
自分が報われぬ想いに
苦しんでいるように
『彼』も苦しんでいるんだと
「そう思えるようになったら
気持ちが落ち着いてきて」
『彼』が私を
選んだという事実を
私が『彼』を
受け入れていたという現実を
「受け入れるコトが
できたんだ」
ジュンジュンは
まっすぐに私を見た。
もう、何もかも
正直に話すしかない
と思った。