「あのジュナちゃんなの?」


振り返ったお母さんは

びっくりしたような
でも、懐かしそうな

やさしい顔をしていた。


ジュンジュンも
その笑顔に
自信を取り戻したのか


「今、『彼』の傍で
創作活動のお手伝いを
しているんです」


「え」

母親は
ジュンジュンの両腕を掴んで


「あの子は今
どうしてるんですかッ?

目は少しはよくなって
きてるんでしょうか!?

ちゃんと食べてますか?

新聞に載ってた写真は
凄く痩せてたけど!!!」


一気に巻くし立ててきて。


「あ、いえ。あの」

その勢いに押されて

ジュンジュンとふたり
思わず顔を見合せた。


こんな母親でも
心配なんか
してたんだ…。

何だか少し安心した。


このヒトの
このセリフがなかったら

私は『彼』に
逢わせたコトを

一生後悔していたかも
しれなかった。


「よろしかったら

これからいっしょに
『彼』のトコロに
行きませんか?」


ジュンジュンの誘いに
母親の顔が曇る。


「…無理です」

「じゃあ、明日とか」

ジュンジュンが食い下がる。


「どの面さげて
あの子に逢えと
言うんですか…」

お母さんのセリフに
ジュンジュンは
面食らっていたけれど


母親の言い分は
もっともだ。


過去の失敗程
臆病にさせるモノはない。

後悔が
おおきければ
おおきい程

謝る権利すらないような
気すらしてくる。


「でも、だからこそ
直接逢って
謝るべきなのでは…!」


私は思わず
声に出してしまっていた。