「ユッキには
受験に集中してて
欲しいからさ」
「そっか。そーだよね」
少し緊張が解けた。
「お願いって?」
私にできるコトなら…。
「『彼』のお母さんを
『彼』に逢わせたいの」
え…。
「『彼』のお母さんの話を
ジュンニイから聞いたんだ」
オークションに
かけられているという
『彼』の絵も観てきたと
ジュンジュンは言う。
「そしたら、いたのよ」
むかいのビルの喫茶室から
『彼』の母親が
その絵をボーっと
見つめていて。
「私の知っている
『彼』のお母さんは
もっと快活で」
あんな憔悴した姿なんか
覚えがなくて
「ショックだった」
「……」
「アニキは
関わるなと言ってたけど
やっぱり
放ってはおけないよ」
…ジュンニイは
関わるなって言ったんだ。
だったら
なおさら論外だった。
「協力して欲しい」
無理だ。
「ホントは自分ひとりで
何とかしたかった!
ヒメを巻き込むなんて
出来ればしたくなかった!!
だけど…!!」
ジュンジュンは
自分のコトを
母親が覚えていたとしても
自分は母親に
いい感情は持たれては
いないだろうと言う。
「いつも『彼』を
ひとりぼっちにしてる
あの母親を
許せなかったから」
だから
いつも睨みつけていて。
「…あの母親は
オトコに夢中で
本当にどうしようも
なかったんだよ」