「ちょっとメシ
食ってくるから」
「もうそんな時間?
すみません」
「あんなどうしようもない
彫刻を一日中見てたから
気分悪くってさあ」
『彼』の作品の悪口を言う
そのオトコを
ジュンジュンが睨みつけた。
「そんな顔すんなよ。
ジュナだって
そう思ってんじゃないの?」
嘲るように笑いながら
そのオトコは
エレベーターの中に
消えていった。
「…どうしようもない
彫刻って」
「今の撮影クルーの
スタッフなんだ」
モニターを通して
平面でしか
作品を見ていないから
作品の良し悪しなんか
わかるワケがないと
ジュンジュンは
鼻で笑ってみせる。
「ヒメのコト
すぐに気づくなんて
それだけ作品に思い入れが
あるってコトだよ」
それは
「どうしようもない彫刻」
という表現に対しての
フォローだったのか。
それとも
すぐに私だと気がついたのは
特別なコトで
他の人間は
気づいたりはしないから
安心しろ
という意味だったのか。