「カメラが
入ってるんですか?」


警戒した母親の足が
止まってしまった。


「制作過程を
記録しているんです」


『彼』の気が散るから
別の部屋から
遠隔操作をしているのだと
ジュンジュンは説明する。


「あれって
監視カメラかと思ってた…」

「その担当が今、出てったし

ミスター達も
この時間は
打ち合わせで留守だし」


私達は運がいいと

ジュンジュンが奥のドアに
カードキーを差し込んだ。


「あのッ!!!」

自分の声が
廊下に響いて

自分で驚いた。


「何?」


「…やっぱり
私、ここで待ってる」


「……」

ジュンジュンは
私の顔をじっと見た。


「セキュリティーカードも
IDカードも持ってないのに

ひとりでいて
通報されちゃっても
知らないよ」

冷たく言い放って

ジュンジュンは
ドアに手をかけた。


「一緒してくださいッ」

お母さんが
私の腕を掴まえて離さない。


「……」

『彼』の姿を見たからって
何が揺らぐモノでもなかった。


だけど

今更、私はどんな顔をして
『彼』を見ればいいんだろう。


ジュンジュンは
私の表情を
きっとチェックするに
違いなくて…。


そう考えただけで
プレッシャーに足がすくむ。


「ここから先は
静かにお願いします」

ジュンジュンが
ゆっくりドアを開けた。