『彼』は
真黒な目隠しをしている。
光が邪魔だと言っていたけど
光ならわかるんだろうか。
上半身ハダカで
黒のジャージには
横に派手なラインが入ってる。
腰でズボンを穿いている
そのダボツキ感が
はっきり言ってカッコイイ。
素足なのがまた
セクシーだ。
誰が見立てたのかな。
ネックレスなんかして。
障害を持っているなんて
きっと誰も気づかない。
手慣れた感じで
制作するその姿は
まるで一枚の絵のようだ。
上半身ハダカの
『彼』の手が
私の裸像に触れる。
その手が
私の顔を確認し
肩を確認し
首筋に触れていった。
これは現実なのか。
過去なのか。
その指使いが蘇ってきて
私は思わず
目をそらした。
ジュンジュンは毎日
こんな光景を
目の当たりにして
いるのだろうか。
私なら耐えられない。
自分のコトに
精一杯の私の視界を
何かが横切って。
お母さん…!
フラフラと
『彼』に
吸い寄せられるように
お母さんは
『彼』に近づいてゆく。
ヤバイ!
私、しっかりしなくちゃ!
私は焦って
母親の腕を掴まえた。
「う…ッ」
その目からはポロポロと
大粒の涙が止まらない。
ジュンジュンが目で
今はダメだと訴えている。
連れ戻そうとするが
母親は動きを
止めようとはしない。
無意識に自分の息子に
近づいてしまっている
ようだった。
お母さん、ダメーッ!
ガッシャーアアアン!!!!
勢い余って
足元のバケツに躓いて
おおきな音を立ててしまう!
『彼』がこっちをむいた。