「ごめんなさい!
ごめんなさい!!!!

許して!!!!!!」


『彼』に怒鳴られて
母親がパニックになる。


なだめようとして

その手を強い力で
振りほどかれる。


部屋を飛び出した母親を
ジュンジュンが追いかけた。


私もその後に
続こうとしたのに

バケツにまたしても
足をとられて
不覚にも転んでしまった。


バケツの中のモノが
大量にこぼれて

カーペットの色が
みるみる変わっていく。


ひえええええ〜〜〜〜〜。


雑巾らしきもので
急いで拭きとろうと
したのだけれど

全然、間に合わなかった。


『彼』の足元まで広がって

そのオフホワイトの
ジャージの裾を染める。


「冷ッ」

『彼』が足を
床から離そうとして
すべりかけて

私は反射的に『彼』を
支えてしまっていた。


「…サンキュ」

『彼』の腕を
後ろから掴んで

その場から避難させて

机に手をかけさせる。

久しぶりに触れた
そのカラダは

少し痩せているような
感じがした。


真っ青に染まった
『彼』のその足を拭く。


裸足なのは
ファッションではなく
安全の為なんだね。


シートなんかを敷かずに
カーペットの上で
作業しているのも

たぶんそういう理由なのだ。


「…ジュナ
シャンプー変えた?」

「!!!!!」

突然
話しかけられて
動揺した。


ジュンジュンと
間違えてるんだ…。