本当に見えてないの?


そっと振り返って
『彼』の目隠しを
外してみた。


『彼』は

ゆっくりと
目を開ける。


瞳の奥に
ちいさく私が映っていて。


綺麗な瞳の色。

深くて
ビロードのような。


『彼』の顔を
こんなに間近に

まっすぐに見る日が
くるなんて

想像もしなかった。


『彼』の手は

何かを確認するように

私の首筋をゆっくり
上がってきて


魔法にでも
かかったように

『彼』の為すがまま

私は動けずにいた。


何故か
頬を涙が伝ってきて


この感情は何だろう。


『彼』に抱きしめられて

私はアタマが
おかしくなって
しまっているのだ。


「!!!」

そのとき
ケータイが鳴らなければ

私はどうなって
いたのだろう。