メールの送信者は
ジュンニイだった。
《遅くなりそうだったら
迎えにいこうか?》
エレベーターの中で
そのやさしい
メッセージを見て
自分のふがいなさに
自己嫌悪で
いっぱいになった。
ごめん。
ジュンニイ、ごめん。
ちゃんとしなくちゃ。
私は大事なヒトを
傷つけてしまう。
涙を拭いた。
ロビーに降りていくと
泣きじゃくる母親を
ソファーに座って
ジュンジュンが
なだめていて。
「遅かったね。
何かあったの?」
「ごめん。部屋中
水浸しにしちゃった」
「…ヒメ
目、真っ赤だよ」
「う、うん」
ジュンジュンの指摘に
動揺する。
「あれが現実で
日常でフツウなんだ。
いちいち同情してたら
つき合えないよ」
涙のワケを誤解され
ココロの中で
神様に感謝した。
「まだチャンスは
いっぱいありますから」
ジュンジュンは
お母さんを励ますのに
気を取られて
いるようだった。
「今日の『彼』は
かなり機嫌が悪かったから」
ジュンジュンは
何度も繰り返し
『彼』の母親に説明をする。
「お母さんが
音を立てたコトに
怒ったんじゃなくて
思い通りに
作品を創れなくて
苛立ってただけですから」
お母さんはそれでも
泣きやもうとはしなかった。
「具合でも悪いの?」
声をかけてきたのは
さっきの撮影クルーの
オトコだった。
「俺の車で
送ってってやろうか?」