ジュンジュンは
『彼』の作品を
けなされたコトを
まだ根に持っているようで
「食事は?」
冷やかな物言いで。
「いきつけの店
混んでてさあ。
車の中でパン食うから。
それより…」
『彼』をひとりにして
大丈夫なのかと
指摘されて
「今、他のスタッフ
いないんだった!」
ジュンジュンが慌て出す。
「乗せてって貰うから
後は任せて。
ちゃんと
私が責任を持って
送り届けるから」
後ろめたかった
ジュンジュンへの
せめてもの罪滅ぼしの
つもりだった。
のに
「知らないオトコの車に
簡単に乗るなんて
言うんじゃないの!
ヒメはオトコに
スキを見せすぎ!」
グサッときた。
確かにそうなんだけど。
あらためて
そんな風に指摘されると…。
「ごめん」
イヤミで言った
ワケじゃないんだと
ジュンジュンは
謝ってくれたけど。
「うん。ジュンニイも
心配するもんね」
「そうだよ!
ああ見えても結構
ヤキモチ焼きなんだから」
「ひで〜な〜。
俺、そんなに
信用ないのか〜」
オトコが私達の会話に
割り込んでくる。
「…タクシー呼んで
貰いますからッ」
ジュンジュンは
そう突っぱねて
ベルマンの元に走っていった。
「ふ〜ん、彼氏いるんだあ」
…何、このオトコ。
ニヤニヤして
気持ち悪い。
「実はさ。
俺、さっきの
アンタと『彼』の情事
隣りの部屋から
モニターで見てたのよ」
…血の気が引いた。
「そんな恐い顔すんなって。
な〜に、俺は
『彼』の絵画に心酔してきた
ひとりだからさ。
やっぱ気になったワケさ」
…全部、見てたんだ。