連れてこられたのは
通っていた小学校の
近所にある廃墟だった。
「立ち入り禁止って
書いてあるよ」
「平気!」
ジュンジュンが軽々と
金網を越える。
「さすが
花形チアリーダー」
変なトコに
感心してしまった。
「ほら、ヒメも」
自慢じゃないけど
体育の成績は破壊的だ。
ジュンジュンに
フォローされながら
何とか金網を乗り越えた。
真っ暗なんだけど
周りの街灯の光で
ところどころ
視界が開けてる。
「覚えてる?」
この辺りにふたりで
チョークでたくさん
落書きしまくったねと
ジュンジュンが懐かしむ。
「これ、パパに
買って貰ったのって
ヒメはいつもチョークの箱を
持ち歩いててさ」
ジュンジュンが
チョークの入っていた箱の
おおきさを手で表現した。
「緑色の箱に入ってて
パパにお名前
書いて貰ったんだ〜って」
「覚えてる」
大事にしていたもん。
でも、その大切な箱を
私はいつの間にか
なくしてしまっている。
「その箱を
取り上げて逃げた
オトコノコのコトは
覚えてる?」
え…。
ジュンジュンはどんどん
先を歩いて行く。
ふたりで
そのコを追っかけて
ここを走っていったんだけど
「私、途中で靴が脱げて
ヒメ達のコト見失って」
私とそのオトコノコが
ここに落っこちてたって
後で気がついたと
ジュンジュンは
足元の鉄製の蓋を指さした。