「汚いモノなんか触れずに
育ってきたんだろうな」


それでも、ただ
馬鹿にされたのは感じて


「わんちゃんのウンコとか
踏んじゃったコトくらい
あるよ」

真剣に返した。


「そりゃ大ウケだワ」

ジュンジュンが笑う。


「辺りが暗くなってきて。

雨が降ってきたんだよね」


あっという間に
水が溜まっていって


「ほらこっちこいよ」

一段高くなってるトコロに
ふたりで身を寄せた。

「水の中に蛙がいるよ」

すくおうとしたら
蛙の絵が
どんどん流れていって。


「勿体ないね」
「また描けばいいさ」


街灯からもれる光も

点いたり消えたり
頼りなかった。


どんどん真っ暗に
なっていって


「…誰かここにいるコト
気づいてくれるかな」

「何、もう不安になったの?
オンナはダメだな」


そう言ってる『彼』の方が
震えていた。


「暗いのが怖いの?

花火大会とか
お化け屋敷とか
楽しめないね」


変に同情したのを覚えてる。


そんな『彼』が


今はずっと
真っ暗な闇の中に
いるのだから


神様は残酷だ。


「待ってれば

ママとパパが
探し出してくれるから
大丈夫だよ」


「だろうね。
ウチの親とはえらい違いだ」


「そんなコトないと思うよ」

「僕を親戚に売るような
オンナなんだ」


「…そんなコト
言ってたの?」

ジュンジュンの顔色が変わる。


「言ってたと思う」


「…それでヒメは
何て答えたの?」