悪意ある暴露


「来れなかったんじゃ
なかったの?」

ジュンニイが
ずぶ濡れになった私を
驚きながら
迎え入れてくれた。


「傘は持って
出なかったの?」


忘れてきた…。


「こんなに冷たくなって」

私の頬に触れる
ジュンニイの手が
あったかい。


「ほら、ちょうど
風呂沸いてるから
あたたまってこい」

バスルームに突っ込まれる。


「こりゃ、ヒドイ」

ジュンニイが
私から脱がしたコートを
洗い場でしぼってみせた。


隣りの脱衣場から
乾燥機を動かす音がして


「明日も学校あるんだろ?」

どうするんだと
ジュンニイの
呆れてる声がする。


雨のおかげで
涙には気づかれずに
いたみたいだ。


「しっかり温まってから
出てくんだぞ〜!」

「うん」


ジュンニイは
やさしいね。


なのに、私は

湯船に沈む
真っ白な
自分のカラダを見て

彫刻に触れていた
『彼』の指使いを
思い出してしまうなんて

最低だった。


『彼』に触れられて

私はあのとき
確かに自分を見失っていた。


すぐにその場を
立ち去れなかったのは

どこか『彼』に

何かを期待して
しまっていたからで。


私は、汚い。


なのに

ジュンニイに
救いを求めようなんて

ずうずうしいのも
甚だしいよね。


もうこのまま
お湯に沈んで
死んじゃいたいくらい

猛烈に後悔した。