学校に着くと

「どうして
ジュンジュンのコートを
ヒメが着てんの?」

ユッキに指摘されて
ふたりアセッた。


「ヒメがさ。
前から貸してって
うるさかったから」

「そうそう!
ジュンニイが
よく似合うよって
言ってくれたから」


ウソをつくときは
できるだけ
登場人物を少なく。

必要以上のコトは話さない。


それが鉄則だ。

こんな苦し紛れのウソ

いつものユッキなら
すかさず
ツッコんでくるトコロだった。

「あ、そうなんだ」

国立受験組のユッキは
受験日を目の前にして
形相も変わってきている。


ダメにしたケータイも
この機会に
新機種にしようとも
思ったけれど

怪しまれるからと
ジュンジュンに
強く止められた。


「ヒメの場合。
ケータイホルダーも
買った方がいいよ」

「え〜」


その日からケータイを
スカートにつけて
歩かされた。


「何かあったらすぐに
SOSできるでしょ」


それはそうなんだけど。

ユッキの知らない
ジュンジュンとの秘密が

またひとつ増える。


3人でいても

ジュンジュンとふたりで
会話するほうが
多くなっていた。


「万全な精神状態で
ユッキを
受験に送り出そう」


刺激しない。

別れた彼氏を
連想させるような
恋愛の話は

絶対にタブー。


それが
ジュンジュンとの
合言葉になっていた。


ジュンニイからのメールを
ジュンジュンにだけ
こっそり見せる。

《仕事が一区切りついた。

今日は気合いれて
ウチに来い!》


「何、これ〜。
どういう意味〜?」

ジュンジュンが大ウケして
ユッキにうるさがられた。


ジュンニイと
上手くいってるんだって
アピールするコトが

ジュンジュンを安心させる。


私はいつものように
買い物袋をさげて

ジュンニイのマンションを
訪ねていった。