確かに。
真っ白な彫刻に
『彼』がモデルに
触れた軌跡を
想像させるような
華やかな色の手跡。
愛おしい者を
慈しむように
愛おしいものを
汚している自分を
責めるかのように…。
初めて作品を
まともに見た。
「…わかったよ…!」
黙り込むしかない私に
業を煮やして
ジュンニイが席を立つ。
「違うの!」
「何が違うんだ!?」
ジュンニイが怒鳴った。
こんなジュンニイは
初めてだった。
「あそこに映っていたのは
ヒメだろ?」
「『彼』とは昔の話で」
「昔?」
ジュンニイは私を
睨みつける。
「あそこに映っていたヒメは
俺がプレゼントした
指輪をしてたけどな」
「……!」
ウソをついた
ワケじゃない。
「何で俺に黙って
前のオトコに逢いにいく
必要があるワケ?」
「ジュンジュンが
『彼』のお母さんを
『彼』に逢わせたいって。
協力してくれって
頼まれて。
だから…!」
「妹のせいにすんのか」
「そうじゃないけど!」
ジュンニイは
私に背をむけて
力いっぱい壁を殴った。
背中が震えてる。
「指輪をしていたヒメは
アイツに抱きしめられて
そのカラダを
触られまくってたよな!」
「それは
目が見えないからで…」
無意識のうちに
言い訳していた。
「目が見えなきゃ
おまえはどこまでも
許すって言うのか!?」
酷いコトバが
どんどん飛んでくる。
「婚約者だとか言いつつ
手も出せずにいた俺のコト
笑ってたんじゃないの?」
「違…っ」
私はもう
首を振るのが精一杯で
コトバが
声が
出なかった。