「おまたせ!」

ジュンジュンに声をかける。


「アニキってば
また姑息なマネを?」

「え?」


やっぱりバレバレ?

「ヒメの口元に
ヒゲついてるよ」

「うそッ!?」


慌てる私に

「なワケないじゃん」


ジュンジュンが
大ウケしている。

ジュンジュンは
楽しそうに歩き始める。

機嫌がいいのなら
それにこしたコトはない。

でも、何だか
無理してるようにも見えた。


昨日の話題には
触れない方が
いいのだろうか。


でも

ジュンニイの前では
話せないようなコトって
いったい…。


不安がどんどん
膨らんでゆく。

やっぱり
はっきりさせて…。


「昨日さ」

ジュンジュンの方が
先に切り出してきた。


「あの後
撮影クルーのスタッフから
ビデオ見せられたんだよね」


カラダが凍る。


「アイツ、『彼』にさ
ヒメには彼氏がいるとか
目を覚ませとか迫ってさ」


ジュンジュンは
私に背中をむけたまま
ひとりでしゃべり続けてる。


「『彼』の方が勝手に
盛り上がってるのは
わかってたし。

ヒメは最後
『彼』の手を払って
拒絶していたもんね」


ジュンジュンは
私の行動を
好意的にとってくれていて

ちょっとホッとした。


「でもね。

『彼』がどんなに
ヒメを求めているかを
思い知らされた」


ジュンジュンが
振りむいて私を見る。


「『彼』ね。

アイツに
何て言ったと思う?」


「……」

「今も昔も
自分の片想いだからって」