崩れ去るモノ
自分の部屋に戻って
電気を点ける。
いつものように
窓辺から
木彫りの熊が
こっちを見て
出迎えてくれていた。
制服を脱いで
部屋着に着替える。
自分のカラダの
あちこちに
青いアザができていて。
「もう、ダメかもしれない」
そう実感させられた。
キッチンに行くと
「あら、今日は
ジュンイチくんトコで
食べてこなかったの?」
ママが声をかけてくる。
「……」
何か返事をする
気力も出なかった。
冷蔵庫を開ける。
「食べてくるとばかり
思ってたから
すき焼き
終わっちゃったわよ〜」
うどんでも作って
あげようかって
ママの気配りさえ
うっとおしかった。
でも、パパもママも
テレビのコト
知らないんだ。
パパやママの知り合いに
私だと気づいたヒトがいたら
今頃、大騒ぎに
なっていただろう。
そう思ったら
少しだけ
肩の荷がおりた気がした。
冷凍庫からミルクを出して
ジンジャージュースで
ホットミルクを作る。
そういえば
キッチンの作業台に
買い物袋を
置きっぱなしにしてきたけど
ジュンニイ
ちゃんと冷蔵庫に
入れてくれたんだろうか。
ごみ出しだって
いつも私がやってたけれど
ジュンニイは
ゴミの日とか
知ってるんだろうか。
もうカンケイないのに。
心配するコトなんて
ないのに。
気がつけば
私はジュンニイの生活の
心配ばかりしていて
これも一種の
現実逃避なんだろうか。