部屋に戻ると
また木彫りの熊と
目が合った気がして

私は電気を消した。


この部屋には
ジュンニイとのしあわせを
思い起こさせるモノが
多すぎる。


暗闇の中
ケータイのメール着信を
知らせるライトが
光っていて。

ジュンジュンやら
ユッキやら
同級生やら。


その内容は
読まなくてもわかっていた。


もう全てがうっとおしい。


電源を切ろうと
ケータイのボタンに
指をかけて

かかってきた電話の
コール音に驚いた。


「なんてタイミングで
電話をコールしてくるんだ」


そして
かかってきたその番号に


息が止まる。


「え…?」


それは

『彼』が常宿にしている
あの高級ホテルの
代表電話番号で。


もしものときの為に
ケータイに登録していた
それは

一度もかけることなく
登録していたことさえ
忘れ去っていた。


ジュンジュン?


ミスター?

「まさか、ね」


心臓が高鳴っているのが
自分でもわかる。


直感的に

「出てはいけない」

と思った。


なのに

電源を切るつもりが
ボタンを押し間違えるなんて


私は神様に愛されて
いないのかもしれない。


「俺、わかる?」