「先生、私が答えます!」

生活指導室の前で
待っていてくれていた
ジュンジュンが

痺れを切らせて
中に入ってくる。


「まず、あの彫刻ですが」


「ちょっと待ちなさい。
話は後で聞いてあげるわ」


生活指導の先生が
ジュンジュンを制した。


「もう1時限目の授業
始まってるでしょう?」


「だって
2対1のこの状況で

このコに申し開きなんて
出来るワケないじゃ
ないですかッ!」


ジュンジュンが
私の横に乱暴に座る。


「あなたも
無期限停学処分に
なりたいですか?」


無期限、停学…?


先生のコトバに
耳を疑う。


卒業を目前にして

大学も決まってるのに?


カラダが震えた。



風紀に関する停学処分は
毎年何人か出ているのは
知っていた。


でもそれは
喫煙とか
飲酒とか
万引きとか

警察のお世話に
なった場合だけで。


「彼女はモデルなんか
やっていません。


『彼』が勝手に
顔を彼女に似せて
創っただけです」


ジュンジュンは
無期限停学の文字にも
ひるまなかった。


「テレビでは、その
ハダカで…抱き合ってたと
聞いたわよ」

言いにくそうに
先生は核心をついてきた。


生活指導の先生は
未婚を通している
50過ぎのシスターだ。


同じ女性でも
30過ぎの子持ちの
クラス担任よりも

性に関する考えが
厳しいのは
容易に想像できた。


「『彼』はいつも
上半身ハダカで
作品を創ってます。


それは目が見えないから
自分の感覚を少しでも
研ぎ澄ませたいからです」


「証拠はあるの?」

先生は承服しかねると
言わんばかりで

結論ありき
処分ありきの
事情聴取、だった。