真実が他にあるなんて
発想がないんだろう。
「番組のビデオを
見て貰ったらわかります。
『彼』のカラダには
たくさんの絵の具や石膏が
飛び散ってますから」
先生が眉をしかめる。
「目が見えないんです。
ヒトに触って確認するのは
当たり前じゃないですか。
『彼』は中途失視力者で
まだ距離感が
上手く掴めないんです」
ジュンジュンは
まるで用意していた原稿を
読むかのように
サラリと言い放った。
「テレビには
映っていませんでしたが
あの日、あの場所に
私も同席していました」
力強い親友の援護射撃。
無罪放免で
生活指導室を後にした。
クラス担任が
追いかけてくる。
「何があったかなんて
もう聞かないけど
しっかり、ね。
みんながみんな
生活指導の先生みたいに
素直な人間じゃないから」
その意味は
教室に入って
すぐにわかった。
針のムシロとは
こういうのだと
実感する。
クラスメイトの好奇の目。
クスクスと笑う声が
必要以上にアタマに響いた。
「はやく席につきなさい」
先生に促されて
数学の授業に参加する。
机の中に手を入れて
その手触りに
カラダが凍った。
使用済みらしい
コンドームが
たくさん
詰め込まれている!
周りを見回すと
男子がみんな
ニヤついていて。
酷い。
誰がこんなコトを…!
べとべとになった手を
机の上に出せずに
固まっている私に
先生が
「早くノートをとりなさい」
と迫ってくる。